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江﨑文武のBorderless Music Dig! 第4夜をおすすめします

 

必聴の番組『江﨑文武のBorderless Music Dig!』

 

 

皆さんご機嫌麗しゅう。いかがお過ごしですか?

今回はNHK-FMにて2024年1月2日~5日に放送された優良番組『江﨑文武のBorderless Music Dig!』の中でも断然神回、再放送分の第4夜について特集します。

 

 

第4夜は神回です。

 

はっきり言って神回です。

 

第4夜は

永野と巡る!オルタナティブ冥府魔道

 

 

とんでもねえタイトルつけたな。

NHKラジオのタイムフリー配信は放送後1週間、オンラインで聴くことができます。

 

江﨑文武のBorderless Music Dig!

 

芸人の永野さんがゲストです。

「ゴッホより普通にラッセンが好き」のネタで日本全国の美大生を震撼させた永野さんです。

 

聴いていただくのが一番ですが、なんとこの番組には書き起こし版がありますので、こちらから内容を確認することもできます。タイムフリー配信終了後は以下のリンクからどうぞ。

 

 

永野さんの言葉が光る回

 

永野さんの本当に鋭い視点でストンと腑に落ちるパワーワードが響きます。

 

永野:その後2000年代に入って、アメリカでは9.11以降、憂鬱ぶっていられなくなったと思うんですよ。「希望」を歌った曲がたくさんできたり。日本でも同じような空気がずっと続いているんですけど、90年代は振り返ってみると、ある意味「憂鬱ごっこ」ができた、贅沢な時代だったのかなって。そういう憂鬱ごっこできる余裕のあるやつが、カルチャーを生むんだなって思っていて。ロックって貧乏な出自から、ハングリーに成り上がって、って思ってるけど、自分が好きなオルタナティブ・ロックの人も、意外と普通にお金のある人たちだったりね。

 

「憂鬱ごっこ」という表現、なかなかできません。

また、公式の書き起こしの文章には出てきませんが、ニルヴァーナの「ハート・シェイプト・ボックス」が流れた後のやり取りでは、『音楽で人を”元気にさせる”ことはできるのか?』という点について、痛烈な感想を述べています。

 

永野「(他人に対して)作用しようと本当にしてるのはわかる。”あなた”を元気にさせようと思って作った音楽だったら、YOUだったらわかる。…だけど、”みんなを”って言ってる奴いるじゃん…とんでもねえなお前!っていう」

江﨑文武のBorderless Music Dig! 第4夜 音源より 筆者による書き起こし(16:05あたりから)

 

あらゆるポジティブ系クリエイターに突き刺さるのではないでしょうか。

 

 

真のパンクとは??

 

永野:ニルヴァーナとマニックス(マニック・ストリート・プリーチャーズの略称)の何が凄いって、既存のものを組み合わせた音楽で、ハードロックとパンクを足しただけって言ったらそれだけだけど、そこに乗せてる気持ちが本気なんですね。本気の人にしか人を感動させることはできないんじゃないかなって思う。

読む!《BMD!》《第4夜》永野(お笑い芸人)と巡る!オルタナティブ冥府魔道《後半》より

 

とは言いつつも、パンクという姿勢について必ずしもギリギリの本気だけが求められているわけではないようです。それは番組の最後に取り上げられたジョン・ライドンについての話から伺われます。

 

永野:不良の帝王みたいな感じで、未だに世界中で彼を模倣する人が世に溢れている。だけど、その本人は自分の真似をして安全ピンをつけたお客さんを見て、哀れだって言ったんですよ。パンクの一番言いたいことは、Do It Yourselfで、自分自身であればいいのに、俺の猿真似が見に来てるって。

読む!《BMD!》《第4夜》永野(お笑い芸人)と巡る!オルタナティブ冥府魔道《後半》より

 

 

番組内で永野さんが紹介したパブリック・イメージ・リミテッドの曲は「ハワイ」。

この曲を何の周辺情報もなしに単体で聴いたなら、誰しも「パンクの曲だ」とは思わないでしょう。

「パンク」というと決まりきったイメージが皆さんの中にもないでしょうか?そういった”お約束”みたいなものを裏切り続けたジョン・ライドンの姿勢を永野さんは「カリスマ」と評しています。

 

僕には東京・新宿東口のスタジオアルタの大型スクリーンで見た永野さんのネタが思い出されました。

 

「私は太りますよ~、年相応に太りますよ~…革ジャンを着て、やせぎすで、ライブハウスに来た若い子に『生き方がパンクっすね』って言われるのだけを楽しみに生きているような中年にはなりませんよ~!!!」

 

ハッとしました。カルチャー界隈を周遊しているとこういう感じの中年はたくさん目にしますからね…。

 

こういった辛辣な切れ味を持ったネタも、深いパンクへの造詣と愛があってこそ生み出されたものなのだと認識を新たにした次第です。

 

 

クリエイティブ、サブカルを愛する全ての人におすすめ

 

江崎さんの的確なレファレンスと永野さんの生きた音楽愛で、90年代のカルチャーシーンを概観できますし、音楽にとどまらず、広く芸術に関わり、愛好する人たちにおすすめします。

 

この記事では永野さんの言葉にフォーカスを当てていますが、江崎さんの音楽を把握し語る能力は素晴らしいです。

膨大な元ネタの集積を要所要所にまと《めて解析した《第3夜 YOASOBI「アイドル」をDig!》も大変面白い回でした。

 

 

 

余談となりますが、音楽を含む芸術は目に見えない分、鑑賞する側も創作する側も野放しになりやすく、怠惰になりがちです。

特に日本ではそういった傾向が強いと個人的には感じています。

物事をどう見たらよいか?ということについて、技術的な成熟の側面があるということは見落とされがちです。

自身の物を見る目を養うには「自分よりも鋭く物事を見ることができる人に倣う」ということが最適な道かと思われます。その点において、この番組は非常に強力な役割を果たしてくれることでしょう。

 

以下は書き起こしのみに収録の部分です。

 

永野:イギリスのこともパンクロックのことも文字でしか知らない中でビックリしたことがあって。セックス・ピストルズとか、初期のパンクは、自分の中でやんちゃな暴れん坊なイメージなんですよ。でも、マニック・ストリート・プリーチャーズは、労働者階級出身ながら、メンバーのうち2人ぐらいはちゃんと大学も行って、メッセージでも、「ちゃんと仕事もらって、勉強して」みたいなこと言ってるんですよ。これが、呑気に生きてた自分にはショックで。パンクって世の中のこと文句を喚き散らして、鋲ジャンなんか着て暴れて、世界に中指立てて、っていうことだと思ってたんです。だけど、めちゃくちゃ大変なイギリスの労働者階級の人たちは、そんなことしていられるほど呑気じゃないっていうか。本当に追い詰められてるから、勉強して知識を得よう、大学に行こうっていうメッセージになる。ヒップホップでも、パブリック・エナミーとかも、「勉強して」ってことを言うじゃないですか。出自があんまり裕福ではないから、暴れるっていう考え方は呑気であって、本当に追い込まれている人っていうのは、勉強して社会を変えたい。

読む!《BMD!》《第4夜》永野(お笑い芸人)と巡る!オルタナティブ冥府魔道《前半》より

 

 

ポーズではないカルチャーの芽が、ここ日本の国内でも育つようになることを望みます。

 

さて、ちょっと真面目な感じになってしまいましたが、僕はこの第4夜は大爆笑しながら聴きました。

特にリンプ・ビズキッドのくだりは必笑です。「ギリ、バイトしないで生きていけるリンプは幸せなのではないか?」という指摘には爆笑しつつもギクリと来ます。

(リンプ・ビズキッドの曲を流している途中のトークが放送されて非常に面白かったのですが、書き起こしはされていないようです。残念!)

 

それでは皆様も素敵なカルチャーライフをお楽しみください。

 

 

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番組内でかけられた曲目は以下に一覧

 

第4夜 永野と巡る!オルタナティブ冥府魔道

楽曲一覧

レッド・ヒル・マイニング・タウン

U2

(3分20秒)

ハート・シェイプト・ボックス

ニルヴァーナ

(2分40秒)

ザ・マッシス・アゲンスト・ザ・クラッシス

マニック・ストリート・プリーチャーズ

(3分22秒)

ディファレント・トレインズ(パート1)

クロノス・カルテット

作曲: スティーヴ・ライヒ

(2分40秒)

フェイス

リンプ・ビズキッド

作詞: ジョージ・マイケル

作曲: ジョージ・マイケル

(1分50秒)

ハワイ

パブリック・イメージ・リミテッド

(2分40秒)

 

以上NHK-FM公式サイトより

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